注意!!!
 これは、R準拠のキー城(のつもり)書き殴り妄想文です。
 芝ヤギの妄想と脳内設定、うわ言で構成されています。
 好き勝手にマイ設定がばんばん出てきますので、
 ご自分のイメージを崩されたくない方は、来た道をお戻りください。
 読んでやってもいいよ!という方は、おかしいところがあっても全部スルーしてください。
 私もおかしいなと思いながら書いています!(*´∀`*)

 時間軸としては、R後+王様が帰った後、くらい・・・?で、多分シリアスだと思うんですが、
 自分でもよくわかりません。(駄目!)
 オチも考えてません。(駄目!!!)
 すいません。(謝った!)






ブラック・アウト


「・・・・・・今のオメーとはデュエルしない・・・」
 待て、とキースは声に出して言ったつもりだった。大声で叫んだつもりでいた。
 実際には声が出るどころか、すでにほとんど意識は飛びかけていた。頭の中に暗闇が迫ってくる。
 城之内が何か言った。すぐ近くに城之内の気配を感じる。しかし、城之内が話す言葉の意味が、キースにはもう理解できなかった。
「復讐鬼じゃなく決闘者としてオレの前に現れた時は・・・いつでも闘ってやるぜ!」
 城之内の気配が足音と共に遠のいていく。
 待て、とキースはもう一度叫んだ。
 まだ何も終わっちゃいない。オレはお前を倒さなきゃならない。
 立ち上がって追いかけなければ、と残ったわずかな意識の中で考える。
 そうして、頭の中では必死にもがいて暗闇から逃れようとしているのに、身体はまるで言うことを聞かずに、床に投げ出されたまま動こうとしない。
 城之内の足音がどんどん遠くなる。
 待ってくれ、とすがるような思いで呟いたその言葉が、声に出ていたのかどうかさえ理解する間も与えられず、それを最後にキースの意識は闇に飲み込まれた。

 白い天井を呆然と見詰めていた。天井には染み一つない。消毒液のようなにおいがした。
 意識はまだはっきりしない。
 真っ白なベッドに寝かされている、ということ以外、ここがどこなのか、どうやってここへ来たのか、何の覚えもなかった。
 ゆっくりと上体を起こしたキースは、緩慢な動きで辺りを見渡す。
 以前「生き返った」とき、検査だ何だと言われて入れられていた部屋だ。病室のようだが、窓は一切なく、外界から完全に隔絶されている。
「目が覚めたようですね。」
 音もなく点いた、ベッドのそばに設置されたモニターに、見覚えのある顔が浮かぶ。
「夜行です。ご気分はいかがですか、キース・ハワード。」
「・・・最高だよ、夜行坊ちゃま。」
 キースは苦々しくそう答えた。気分がよすぎて反吐が出そうだ。
 夜行は表情を変えずに、軽く目を伏せただけだった。
「・・・あれから、どのくらい経ってんだ・・・どーなってる・・・」
 キースはぼそぼそと独り言のように言いながら、自分の手のひらを見た。
 握り締めてみると、確かに自分の手だ。力の入る感覚がある。
「R・A計画は失敗しました。邪神のカードももうありません。」
「・・・そーかよ。そいつはよかったな。」
 R・A計画など、キースにとってははなからどうでもいいことだ。キースは鼻で笑って答えた。
 邪神のカードのことも、そもそも気に食わなかったのだから、今更それがなくなろうと惜しくも何ともない。
 夜行はそんなキースの様子を見て、微かだが眉をひそめる。しかしそのわずかな表情の変化が何を意味するのか、キースにはわからなかった。
「・・・R・A計画が終わった今、あなたが私を騙したことについて責めるつもりはありません。」
「そりゃぁまったくありがてぇこった。おやさしい夜行坊ちゃまに感謝するぜ。」
 キースは唇を端を吊り上げて笑い、恭しく頭を下げてみせた。もとより、責められたところで悪びれるつもりは毛頭ない。
 すでにはっきりしている意識は、キースに自分自身の身体の感覚を伝えている。
 どれほど眠っていたのかわからないが、身体のどこにも傷はなく、動き回るに十分こと足りる程度の体力もありそうに思えた。
 キースは再び、手のひらを握り締め、拳を見つめる。手のひらに自分の爪が深く食い込む痛みが、今は心地よかった。
「『死んでいた』はずのあなたを目覚めさせたことは、私に責があります。
 あなた自身がどうお考えかは知りませんが、あなたには私の管理下に入っていただきます。」
「管理下だぁ?」
 夜行の言葉に、キースは横目でモニターを睨みつけた。モニターの中の夜行は、表情のない目でキースの方を見ている。
「あなたの精神は一見、安定しているように見える。しかし、あなたを蘇らせた邪神は今や存在しない。
 以前のあなたは、邪神によって精神を保たれていた――同時に、あなた自身も邪神に依存していましたが。
 結果、あの城之内という少年に邪神を倒され、あなたの精神はブラックアウトを起こした。だからこそ、あなたはここにいる。」
「・・・・・・・・・」
 キースの沈黙を無言の非難と取ったのか、夜行は有無を言わせぬ調子で続ける。
「正直なところ、邪神が失われた時点であなたの精神がブレイクダウンすることは免れないと思っていました。
 今のあなたの精神を支えているのは生への執着です。それが何に起因しているのかは、私にはわかりません。
 しかし、その執着がなくなれば、あなたの精神は今度こそ」
「うるせぇ。」
 夜行が再びわずかに表情を曇らせながら続けようとするのを遮り、キースはベッドの背もたれに寄りかかって薄笑いを浮かべた。
「オレはオメェのくだらねぇお遊びには、もう十分付き合った。遊びの時間が終わったんなら、オレは好きなようにやらせてもらう。」
 キースのその言葉は、それまで一貫して表情を崩さなかった夜行を少なからず驚かせたようだった。
 モニターの夜行は驚きに目を見開き、困惑した表情を浮かべている。
「しかし、それではあなたの」
「だまりな。オレはオレ以外に従うつもりはねぇ。
 ついでに、検査だか何だかしらねぇが、わけのわからねぇコードまみれにされるのも、おかしな機械にかけられるのも真っ平ごめんだ。」
「・・・・・・・・・」
 夜行はもう何も言わなかったが、しかしその顔には何か言いたげな色が浮かんでいた。
 キースはそれに気づいていたが、夜行が何を言おうと聴いてやるつもりはない。
 夜行もそれをわかっているからこそ、黙ったままでいた。
「とりあえず、腹が減りすぎて反吐を吐こうにも吐けるモンもねぇ。食うモンくらい、用意してあるんだろうな。」
「・・・わかりました。すぐに運ばせましょう。」
 キースが言うと、夜行は諦めたように目を伏せてうなずいた。モニターが点いたときと同じく、音もなく消える。
 黒い画面に、自分の痩せこけた顔が映るのが見える。キースはその顔に胡乱な視線を向け、声もなく薄く笑いかけた。

 カードの世界に神がいるように、現実世界にも神がいると言うのなら、それはきっと邪神よりも相当タチが悪い、とキースは思う。
 キースが使った邪神イレイザーは、自身が墓地(セメタリー)へ送られたとき、場(フィールド)にあるすべてのカードを道連れにする能力を持っていた。
 しかし現実世界の神は、自分はこの世に留まりながら、好き勝手に選び出したものを有無を言わさず墓地へぶち込んでしまうのだから、よっぽど理不尽だ。
 そして自分は、この世という名の場と墓場を行ったり来たりさせられている。まったく、ジョークにしても笑えない。
 オレがあと何回死ぬことになるか、今度テッド・バニアスとでも賭けみるか。
 冗談半分、そんなことを考える。しかしその賭けも、成立する前に結果が出てしまうかもしれなかった。
「オレの勘じゃ、あと2回はいけると思ったんだがな・・・」
 誰に言うともなく呟く。その声は小さくはなかったはずだったが、大粒の雨が激しく地面を叩く音に掻き消され、自分自身でさえ満足に聞こえなかった。
 冷たい雨が顔と言わず、腕と言わず、打ちつけられる。
 夜行が寄こした手下が食事を持ってきたところを、隙をついて逃げ出した。あの部屋は、I社の日本支社の中にあったらしく、建物を出ると見たことのある町だった。
 しばらく思いつくままに走り、目に入った交差点の表示板を見てようやく、自分がいるのは「童実野町」なのだとわかった。しかし、それがわかったからといってどうなるわけでもない。
 相当長く眠っていた身体は、思っていたよりも自由が利かなかった。足取りが覚束ないまま、とにかくI社から少しでも離れた方がいいと、右も左もわからない町を進んだ。
 夜行の手下が追ってきているのかどうか、キースにはわからなかった。振り返っても、それらしい影はどこにもない。
 考えてみれば、夜行はああ言っていたが、実際には夜行の方も、もはやキースには何の用もないはずだ。
 夜行がキースを蘇らせたのは、ペガサスを蘇らせるための実験に過ぎない。それに、蘇ったキースがしたのは、夜行が抱えていた憎悪の照準を遊戯に向けさせ、その引き金を引かせただけだ。R・A計画に、キースの存在が必要というわけでもなかった。
 入り組んだ路地裏に迷い込み、薄汚れたビルの壁にもたれかかる。荒い息を吐いていると、突然頬に冷たい感覚が走り、瞬きの間に酷い雨が降り出した。
 せめて屋根のある場所に移動しようと身体を起こしかけて、目の前がぐらりと揺れた。ふらつきながら、再び壁にもたれかかる。
 急激に使われた身体は、あまり機嫌が良くないようだ。今更、夜行の手下が運んできたものくらいは食べておけばよかった、などと妙に悠長なことを考える。
 それほど長く走ったわけでもないのに、足が異様に重く感じられて、キースはずるずると壁伝いに座り込んだ。
 情けねぇ。これがあのバンデッド・キースか。
 打ち付ける雨は冷たいのに、その雫が肌に触れた次の瞬間にはもう蒸発しているのではないかと思うほど、身体が熱い。
 自分の鼓動が早く、大きくなって、全身に響いているような感覚が、徐々に強くなっていく。
 息を吐くたび、こめかみの辺りを掠める鈍い痛みを感じながらも、しかしキースにはどこか余裕があった。
 この程度のことなら、あの「死」を体感させる暗闇に比べれば、お遊びのうちにも入らない、とキースは思った。
 視覚も聴覚も触覚も、身体の感覚すべてを奪われ、自分自身の存在さえ感じられないあの闇に戻るくらいなら、自分自身の鼓動や熱、雨の冷たさや痛みさえ、何かを感じられるだけましというものだ。
「こう何度も死んでりゃ、カミサマもさぞ忙しいだろうな。」
 自嘲的に笑って、キースは熱い息を一つ吐く。緩く瞬きし、何度目かに瞼を下ろすと、もう雨音も聞こえなかった。





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